漢方の基礎知識:外部からやってくる病気の原因あれこれ「外因」

漢方・東洋医学

漢方では
病気をもたらす病因を
どこからやってくるのかを
分けて考えます。

  
  
  

「内因」については
前回「五志・七情」の際に
まとめていきました。

その他にも病気の原因は
自分の中からだけでなく
外の環境による「外因」や、
生活習慣などをさす「不内外因」
もあります。

  
  
  

今回は
その外部からの原因「外因」
前回触れなかった「内因」の
もう一つ
について
調べていきたいと思います。

「内因(ないいん)」は大きくわけて、2つ

病因における内因は
大きく2つに分かれます。

  

前回まとめた
「内傷七情(ないしょうしちじょう)」

  

もうひとつは
「先天不足(せんてんふそく)」と呼ばれる
「先天的な虚弱体質」です。

外部からの病因「外因(がいいん)」とは

「外因」とは
主に外部環境の変化
を指します。

  
    

風・寒・暑・湿・燥・火の
6つ邪気があり
これらは「六淫の邪(「ろくいんのじゃ」又は「りくいんのじゃ」)」
と呼ばれています。

風邪(ふうじゃ)

年間通じて現れますが
特に春が多い
と言われています。

  

軽く高く舞う”風”の性質を受けて
風邪の特徴は
発症が急で、症状の移り変わりが早い
上半身に症状が目立つ
他の外邪をともなって身体に悪影響を及ぼす

●風邪の症状●
  ・寒気
  ・発熱
  ・頭痛
  ・めまいやふらつき
  ・鼻水や鼻づまり
  ・喉の痛み
  ・咳など 
 一般的な風邪(かぜ)の初期症状が現れます

「他の外邪に伴って悪影響を及ぼす」
例としては
寒邪と合わさり風寒邪(ふうかんじゃ)
火邪と合わさり風熱邪(ふうねつじゃ)
湿邪と合わさり風湿邪(ふうしつじゃ)
  

これらの症状は
風邪と各外邪の
両方の性質を持ったものとなります。
  

風邪は六淫の中でも
主要な発病因子であり、
先導者
といえます。

寒邪(かんじゃ)

冬の厳しい寒さや
現代だとクーラーの当たり過ぎ
などがあたります。

  

体内では陽気が衰え
陰陽のバランスが崩れます。

  

気血の流れが停滞し
冷えや痛みを生じる
ようになります。

●寒邪の症状●
  ・強い寒気
  ・頭痛
  ・首肩の凝り痛み
  ・関節痛
  ・腹痛や下痢 などが挙げられます。

寒邪によって引き起こされる症状は
冷えによってさらに悪化します

暑邪(しょじゃ)

暑邪は夏の盛りに見られますが
夏場の高温や季節に関係なく
高温となるような職場や
住環境などでの生活にあたります。

  

多汗は「津液」を消耗させると同時に
「気」も排出
するため
息切れ、脱力感なども引き起こします。

●暑邪による症状●
  ・高熱
  ・顔面紅潮
  ・口の渇き
  ・発汗過多
  ・だるさ
  ・意識障害 などが挙げられます。

暑邪が引き起こす症状は
”熱中症”によるものと
ほぼ同じ
と考えられます。

  

夏は温度、湿度ともに高く
湿邪を伴うことも多く見られます。

湿邪(しつじゃ)

湿邪は
梅雨時の湿気や
通気性の悪い環境に現れやすくなります。

  

「湿」は濁りと粘りの性質があるため
体内に入ると
経絡や臓腑を詰まらせ
治りにくく、
再発をくりかえしやすい
不調を
招くことがあります。

●湿邪による症状●
  ・身体の重だるさ
  ・頭が重い
  ・頭痛
  ・むくみ
  ・食欲の低下
  ・吐気
  ・下痢
  ・腰痛や関節痛、湿疹 など

湿邪による痛みの症状は
雨の日や台風の接近によって
悪くなりやすく

シクシクとした鈍痛として
現れやすいです。

  

また「湿」は
水の流れのように
下に向かう性質があります。

  

そのため身体の下部に
現れることが多く見られます。

燥邪(そうじゃ)

燥邪とは
秋から冬にかけての
乾燥した気候などに現れやすくなります。

  

「燥邪」が人体を侵すときは
多くは口鼻から入り
潤いを好む肺に侵入
します。

  

人体の津液を
最も消耗させやすく
する特徴もあります。

●燥邪による症状●
  ・口・喉・鼻・眼・皮膚などの身体の乾燥
  ・乾燥した咳
  ・切りにくい痰
  ・喉の痛み
  ・便秘 などが挙げられます。

火邪(かじゃ)・熱邪(ねつじゃ)

火邪には、季節性はなく
他の風・寒・湿・燥の邪気が長期にわたり
体内に鬱していると
変化して熱化したもの
です。

  

炎症や熱感をともなう
症状を引き起こす存在で、
気・津液を損傷した際の
不調
が出やすくなります。

  

「熱」は炎上・蒸発する性質があるため
上半身に症状が出やすいのが特徴です。

●火邪・熱邪の症状●
  ・高熱
  ・喉の腫れや痛み
  ・粘々した痰をともなう咳
  ・眼の充血
  ・鼻血
  ・頭痛
  ・顔面紅潮 などが代表的です。

これら以外にも
火のようにかき乱す性質があるため
 ・イライラ感、落ち着きのなさ
 ・寝つきの悪さ
 ・精神不安
 ・不眠などの症状も
火邪によって引き起こされます。

  

この場合は
精神的ストレスの蓄積や
慢性病などが
火邪を生む原因といえます。

火邪と似た言葉に
熱邪(ねつじゃ)があります。

両者の内容はほぼ同ですが
病状の強さ(火邪の方がより強い)で
使い分けされることもあります。


「六淫の邪」以外の外因:「外傷」と「癘気(れいき)」

外因には六淫の邪以外に
外傷」や「癘気(れいき)」が含まれます。

  
  

「外傷」とは「怪我」のこと。

  
  

「癘気」とは
悪性の感染症
(コレラ、ペスト、チフス、ポリオ、天然痘など)指し
六淫の邪より強力な
伝染性と流行性
を持っています。

  
  

疫癘の発病は急で症状も重篤です。

  
  

疫癘の流行は
・気候の異常
・自然災害
・衛生環境
・流行対策の適否 などと
密接な関係があります。

●参考サイト・書籍●
「プロが教える東洋医学のすべてがわかる本」 平馬直樹 ナツメ社

https://www.123do.co.jp/cgi-bin/medicine/diary.cgi?field=5 一二三堂薬局「なぜ病気になるのか」
https://kanpodou.com/kiso03/soto/ 小島薬局本店・漢方堂「外因について」

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