はじめの漢方:同じ「梅」でも効果が変わる!薬膳で読み解く体調に合わせた「梅」の使い方

春から初夏にかけて
梅の実が少しずつ市場に出回りはじめます。

 
 
 

ツヤのある青梅を見かけると
「今年も梅仕事の季節が来たなあ」と
心が躍る方も多いのではないでしょうか。

 
 
 

日本人にとって梅は
とても身近な存在ですが、
薬膳の視点から見ると
梅には私たちの心身を
健やかに整えてくれるパワーが
ぎゅっと詰まっています。

今日はそんな「梅」の薬膳的な魅力や
加工による効果の変化
体調に合わせたおすすめの取り入れ方
そして
注意点についてお届けします。

梅の薬膳的効能とは?

五味】酸味
【五性】平性(温めも冷やしもしない性質)
【帰経】肝・脾・肺・大腸

五臓では「肝」に作用し、
特に“気の巡り”を整える効果が
あるといわれています。

 
 
 

現代で言うところの
ストレス緩和や
イライラの鎮静にぴったりの食材。

 
 
 

その他にも、以下のような効能が知られています。

生津止渇(せいしんしかつ)
  唾液や体液を補い、のどの渇きを潤す
収斂(しゅうれん)作用
  体の“漏れ”を防ぐ(汗のかきすぎ、下痢など)
安蛔止痛(あんかいしつう)
  お腹の張りや寄生虫による痛みを和らげる
整腸作用
  胃腸の働きを整え、食欲不振にも

梅は特に「酸っぱい」味が
特徴ですよね。

 

 

この酸味には、気を引き締め
体の余分な熱を冷まし
汗や津液の漏れを防ぐ力があると
されています。

 
 
 
また梅は
「食べる日焼け止め」と呼ばれるほど
ビタミンやミネラルが豊富✨

紫外線を受けてできた
活性酸素を抑えてくれます。

 
 
  

どんどん日差しが強くなり
汗ばんでいく季節にぴったりな理由は
ここにあるのです。

加工による効能の変化

青梅をそのまま食べるのは
有毒のためNG
ですが
私たちが日常的に食べている
「梅干し」や「梅シロップ」「梅酒」などの加工品は
安全でかつ
効果的に体に取り入れることができます。

 
 
 

それぞれの加工法で
効能にも変化が見られます。

梅干し

塩で漬けて天日干しされた梅干しは
強い殺菌作用
消化促進作用
があります。

 

特に胃もたれや
二日酔いのときに効果的。

旅先でお弁当に梅干しが入っている理由も
食中毒予防のためなのですね。

 

また、発酵によって
乳酸菌が生まれるため
腸内環境を整える効果
も期待できます。

 

体力の落ちているときや
食欲がないときに、
白湯に梅干しを入れて「梅湯」にすると
ほっと心も体も緩みます。

梅シロップ

砂糖で漬けた梅シロップは
エネルギー源としてすぐに使える
ブドウ糖や果糖が豊富

 

夏バテや脱水予防におすすめです。

 

水や炭酸水で割って梅ジュースにすれば
お子さんにも喜ばれる爽やかな飲み物に。

ただし、冷たい飲み物は
胃腸を冷やしやすいため
冷えやすい体質の方は
常温やお湯割りでどうぞ。

梅酒

アルコールに漬けた梅酒は
血行を促し
冷えや血の巡りが悪いタイプの方に◎。

 

ただし、アルコールですので
飲み過ぎには注意を。

 

就寝前に少量のお湯割りにして飲むと
体が温まり
リラックスして眠りにつきやすくなります。

 

冷え性や緊張タイプの方には
心強い味方です。

「梅は三毒を断つ」

梅は栄養価が高いことで知られていますが
日本最古の医学書『医心方』に
「梅は三毒を断つ」という言葉があります。

 
 
 

「梅は三毒を断つ」という言葉は
梅が体内の不調の原因とされる
「水毒」「食毒」「血毒」を
解消する働き
があると
古くから伝えられてきたものです。

 
 
 

具体的には、

✅余分な水分を排出してむくみを解消する(水毒)
✅消化不良を改善して疲労回復を促す(食毒)
✅血液をサラサラにする(血毒)

といった効果が期待されているのです。

 

三毒を詳しく見てみましょう。

水毒(すいどく)

水毒とは、
体内の過剰な水分が停滞することで起こる
むくみや冷え
などを指します。

 

梅は利尿作用があり
体内の余分な水分を
排出する効果
があるため
水毒を解消するとされています。

食毒(しょくどく)

食毒とは、
消化不良や食生活の乱れによって生じた
未消化物や疲労物質
を指します。

 

梅に含まれるクエン酸は
疲労物質である乳酸を分解する働きや
消化を助ける働き
があり
食毒を解消するとされています。

血毒(けつどく)

血毒とは、血液の汚れや停滞を指します。

 

梅は血液を中和し
弱アルカリ性に近づけることで
血液をサラサラにする効果
が期待できます。

体調に合わせたレシピアイデア

体調や体質に応じて
梅の使い方を少しアレンジしてみましょう!

 
 
 

ここでは薬膳の考えをベースにした
梅の取り入れ方をご紹介します。

疲れやすく、食欲がないときに「梅としそのお粥」

梅干しをたたいて
赤しそとともにお粥にトッピング。

 

胃腸にやさしく
しその香りが食欲を引き出してくれます。

消化吸収が落ちているときの
朝ごはんに最適です。

暑さでバテ気味のときに「梅ジュース」

梅シロップを炭酸水や水で割った梅ジュースは
脱水やミネラル不足の対策にもなります。

日中の水分補給として
仕事や家事の合間にどうぞ。

便秘がち、腸内環境が気になるときは「梅酢キャベツ」

千切りキャベツに梅酢を加えて
浅漬けにすると、
乳酸菌と食物繊維のダブル効果で
お腹がすっきり。

 

ご飯のおともやお弁当にもぴったりです。

梅を取り入れる際の注意点

薬膳的に優れた効果を持つ梅ですが
取り入れ方にはいくつか注意点もあります。

食べすぎ注意

梅干しには塩分が多く含まれるため
1日1〜2個が目安です。

胃が弱い方は空腹時を避けて

強い酸味が
胃を刺激することがあるため
胃弱の方は食後に取り入れると◎。

梅酒・梅ジュース・梅ジャムの糖分に注意

糖質制限中の方や
血糖値が気になる方は
量を調整することが大切です。

青梅の生食には毒が⚠️

青梅には「アミグダリン」という
有毒成分が含まれているため
絶対に生では食べないよう
にしましょう。

 

加熱・加工によって無毒化されますので
必ず下処理をしてから使いましょう。

まとめ

これから旬を迎える「梅」は
薬膳的にも
魅力がたっぷりの食材です。

 
 
 

加工の仕方によって効能が変わるため
自分の体質や体調に合わせて
使い分けることで
より効果的に体を整えることができます。

 
 
 

疲れやすい
夏バテ気味
食欲がない
冷えやすい…

 

そんなときには
ぜひ「梅」の力を借りてみてください。

 
 
 

昔ながらの知恵と
薬膳の知識を組み合わせて
日々の食卓を
心と体にやさしいものにしていきましょう。