毎月の生理
妊娠
出産
更年期
女性の体は一生の中で
何度も大きく変化します。

そしてその変化に寄り添うように
心も揺れ動きやすくなるものです。

生理のたびに体調が崩れる

年齢を重ねるごとに疲れやすくなった
そんな悩みをお持ちの方に
ぜひ知っていただきたいのが
東洋医学における
“奇経八脈(きけいはちみゃく)”の存在です。
今回は、奇経八脈が
女性の健康にどう関わっているのか
その役割を薬膳の視点も交えながら
お伝えします。
奇経八脈とは?正経にない“特別な流れ”
経脈とは、
気や血を全身にめぐらせる
「通り道」のこと。
その中でも、
臓腑と直接つながり体全体を調和させる
「正経十二経脈」に対し
「奇経八脈」は、
正経の働きを補助し
全身のバランスを調整するための
特別な経脈です。
奇経八脈の8つの種類
- 任脈(にんみゃく)
- 督脈(とくみゃく)
- 衝脈(しょうみゃく)
- 帯脈(たいみゃく)
- 陰蹻脈(いんきょうみゃく)
- 陽蹻脈(ようきょうみゃく)
- 陰維脈(いんいみゃく)
- 陽維脈(よういみゃく)
これらは臓腑に直接対応していないものの、
体内の『エネルギーの貯蔵庫』としての役割を持ち
必要に応じて
正経へエネルギーを供給したり
全体の気血の巡りを整えたりします。

特に、
❶任脈・❸衝脈・❹帯脈は
女性の体と非常に深い関係があります。
任脈・衝脈・帯脈 〜女性の一生に寄り添う三大奇経〜
任脈(にんみゃく):女性の“母なる川”
任脈は、体の正面を上下に流れ
全身の「陰」のエネルギーを統括する経脈です。

特に、
女性ホルモンのバランスや
子宮の働き
生殖機能に深く関わっているため
東洋医学では「女性の脈」とも呼ばれています。
任脈がスムーズに働いていないと
以下のような症状が現れやすくなります。
・月経不順
・生理痛
・不妊
・更年期のほてり
・気分の落ち込み
漢方では
任脈の流れを整えることで
女性の生理周期を調える処方(例:当帰芍薬散、加味逍遥散など)が
用いられることがあります。
衝脈(しょうみゃく):命の根源を支える“血海”
衝脈は、
気血の貯蔵庫としての役割があり
「五臓六腑の海」あるいは
「血海(けっかい)」とも称されます。

女性の生理周期
妊娠・出産に密接に関わり
いわば“命の流れ”を支える経脈です。
衝脈に乱れが生じると、
・月経過多や過少
・不正出血
・流産
・妊娠中の体調不良
といった症状が現れることがあります。
また、
感情的な揺らぎとも関係があり
衝脈が乱れると
不安や焦り、抑うつ感などが
出やすくなります。
衝脈を通じて子宮から出る血液が
月経となると言われています。
帯脈(たいみゃく):女性の体を“帯びて整える”
帯脈は、腰のあたりを横に走る
唯一“横向き”に流れる経脈。

身体全体を「帯のように」まとめ
正経や他の奇経の流れを
整理・保持する働きを持ちます。
特に、
・産後の体調不良
・腹部のたるみ
・下半身の冷えやむくみ
・下垂感(子宮脱や膀胱下垂など)
といった症状は、
帯脈の働きが
低下しているサインかもしれません。
奇経と女性ホルモンの深いつながり
現代医学では、
女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)による
心身への影響が広く知られています。

一方、東洋医学では
ホルモンを「気血の流れ」として捉え
奇経を通じて調整していきます。
つまり、
奇経の流れを整えることは
女性ホルモンのバランスにも
影響を与えると考えられています。
薬膳で奇経をサポートする食養生
奇経の流れを整えるには
体質に合った薬膳も非常に有効です。
以下に、
奇経八脈のうち女性にとって
特に重要な3つに合わせた
薬膳食材を紹介します。
任脈を整える薬膳食材
当帰(とうき)…補血・活血
なつめ…気血を養う、精神を安定
黒ごま…腎を補い、ホルモンバランスを整える
普段の食生活では耳慣れない「当帰」ですが
漢方薬として用いられるセリ科シシウド属の多年草
当帰の語源は「当(まさ)に帰る」
つまり子宝に恵まれなくて
里へ返された嫁が、
当帰を摂って
妊娠しやすい体調へ整えてから夫の元へ帰る。
あるいは里で出産後、なかなか体調がすぐれない嫁が
当帰で体調を回復して
夫の元へ帰る
などの意味があるといわれています。
衝脈を支える薬膳食材
よもぎ…温経止血、血の巡りを良くする
羊肉…温陽補腎、冷えに強い
くるみ…腎を温め、精を補う
帯脈を整える薬膳食材
はとむぎ…利水消腫、お腹まわりのむくみに
陳皮(ちんぴ)…気の巡りを良くする
生姜…気を温め、湿を飛ばす
まとめ&おわりに
奇経八脈は、
東洋医学の中でも特に
“見えにくいけれど、なくてはならない存在”。
その中でも、
任脈・衝脈・帯脈は
女性の一生を通じて
心身の変化に寄り添ってくれます。
・生理痛や月経不順で悩んでいる
・妊活や妊娠中の体調が気になる
・更年期を前向きに乗り越えたい
そんなとき、奇経の存在を知ることで、
体と心のつながりが
見えてくるかもしれません。
薬膳は、難しいことをしなくても
日々の食材選びや
調理法の工夫で実践できます。
女性の体はとても繊細で
でも、
とても力強いもの。
奇経という“内なる流れ”を意識することが
自分自身と優しく向き合う
第一歩になりますଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧
体に“調和”が戻ってくるはずですよ。
これからも、薬膳や漢方の視点から
経脈を意識した
セルフケアを一緒に深めていきましょう。