漢方の基礎知識:五臓六腑「土」消化・吸収し、全身に運搬する働きを担う『脾』

今回は
五行の第4元素である「土」です。

それに呼応する臓腑
『脾(ひ)』
についても調べていきます。

土の性質「変容するエネルギー」

「水」の種子の時期から
「木」である成長と加速の時期が過ぎ
拡張する力と勢いがある「火」の時期が過ぎると
形となる「土」の時期となります。

  
  

植物で言うと”実”がなる時期です。

「土」は具体化したり
形を作ったり
変容するエネルギー
です。

  
  

また
それを維持する働きもあります。

  

養育
変化
受け入れる
具現化
育てる

という性質があります。

『脾』の主な機能

五行の「土」に属す臓腑は『脾(ひ)』です。

  

体を形作る筋肉や
栄養に変容させたり
吸収させる機能に
関わるからだと言われています。

  
  
  

中医学では「脾」は
「胃」と共に
消化吸収に関する働きを
担っていると考えられており
西洋医学の脾臓とは
生理機能が全く異なっています。

西洋医学でいう「脾臓」は
胃の左後ろに位置し
消化機能はなく
血液を蓄えたり
免疫機能に重要なリンパ球を作る働きがあります。

①飲食物を消化・吸収し、運搬する(運化(うんか)作用)

『脾』の働きは
単なる消化吸収だけでなく
体に必要な栄養分を
全身の各組織に供給する機能があります。

   

”運”とは「運搬」
”化”とは「消化」
を意味します。

   

実際の消化は胃と小腸が行いますが
そのコントロールは
『脾』の運化作用によるものです。

  

また『脾』は水液の運化も担っており
飲食物から水分を吸収し
津液として全身へ運搬しています。

②持ち上げる機能(昇清(しょうせい)作用)

小腸から脾に
脾から肺へ
栄養分と津液を上へ持ちあげられるのは
この機能のおかげです。

 

内臓の下垂を
防ぐ役割
も含まれています。

③血が血脈からシミ出るのを防ぐ(統血(とうけつ)作用)

血液が
血管外に漏れ出さないようにする作用
もあります。

消化不良や全身失調を生む『脾』の不調

『脾』の機能が低下してくると
消化機能がダメージを受けやすくなります。

①食欲不振や味覚異常

『脾』の出口は”口”であり
『脾』の機能の状態により
食欲や味覚が左右されます。

・食欲不振や消化不良
・膨満感
・腹痛
・下痢
・軟便 などの
消化不良や胃腸の症状

・味覚が鈍くなる
・口内炎
・口臭
・唇の赤味やツヤがなくなるなど
口唇の不調も現れていきます。

②血尿や血便など

血液を漏らさないように保つ
「統血」の機能障害が及ぶと

・血便や血尿
・不正性器出血
・皮下出血や月経過多 などの症状が現れます。

③内臓が下がってくる

持ち上げる機能
「昇清作用」が低下することによって
気や養分が上方に送られなくなります。

気血の不足により
・元気がない
・顔色が悪い
・疲れやすい
・痩せる
・手足に力が入らない などの
症状もみられます。

内臓も持ち上げられなくなると
・胃下垂
・脱肛
・慢性下痢 などの症状も
引き起こします。

④津液の代謝が悪くなる

水液の運化低下は津液の停滞
ひいては痰湿という
水分代謝異常物を引き起こします。

肺に痰が入ると
・咳
・喘息 など
呼吸器系に異常を引き起こします。

おわりに&まとめ

比較的分かりにくい臓腑である
『脾』ですが
役割はとても重要!!

  
  

生きていくために栄養分を消化し
取り込み
身体を形成していきます。

  
  

毎日食事をしている私たちが
一番機能を感じる身近な臓腑とも言えるでしょう。

  
  

こんな重要な『脾』ですが
水分が苦手な臓腑。

  
  

水分の取り過ぎで
不調を来しやすくなっています。

  
  

胃脾の弱い方は
水分の取り方に
注意をしてみてください。

  
  

私はこれを知ってから
不調が改善されつつありますよ♬

●参考サイト・文献●

「カラダを考える東洋医学」伊藤剛 朝日新聞出版
「プロが教える東洋医学のすべてがわかる本」平馬直樹 ナツメ社
 https://www.timeless-edition.com/archives/3792#tree  Timeless Edition「東洋医学」五元素
 http://kagetsu-clinic.or.jp/kanpou/k_06.html 花月クリニック「肝について」